7月4日(月)ママの頭は、テンテンオブラートらしい。
8時過ぎにトイレに起きてきたママリン、「起きる? まだ寝とく?」に、「そうやなぁ。まだ眠たいけど、起きようかなぁ」。
「ちゃんと、歯を磨きな。最近、ママリン、お口臭いよ」
「はい」
「これと、これに着替えてな」
「はい」
「今日はベランダで、ご飯食べて。後で、ジェフのブラッシングしてな」
「わぁ〜。ベランダで食べるのぉ。うれしいなっ」
って、子供かぁ。いや、子供である。頑固で意地っ張りで、ややこしい子供である。って、これは子供の頃の私かぁ。
で、今日は8時半に下に行くが、管理人さんのとこに行ってないみたいで、10分おきに「まだ、お迎えこないよぉ。今日は休みと違うの」と文句を言いに上がってくる。
で、9時20分にお迎え。
「わぁ、酒井さん、今日はおしやれですねぇ」とスタッフの畑中さんが褒めてくれるので、
「みなさんも、おしゃれじゃないですかぁ」と、私が他のおばあちゃん褒めると、
「いえいえ、私なんか、そのへんのものを着てるだけで…」「いえいえ、おしゃれなんてねぇ…」「いえいえ、そんなことないですよぉ」と、3人のおばあちゃんが同時にうれしそうに「いえいえ」と返して来る。
ほんと、乙女みたいで、可愛い。
レースの上着を羽織ったり、フワフワのオーガンジーのブラウスを着てたり、ほんとにみんさん、おしゃれさんだ。ママももう少し、おしゃれさんにしてあげよう。
5時にケアマネジャーの松岡さんが介護申請の更新書類を作りに来てくれる。
こういうものは専門用語が多くてさっぱりわからんので、私はサインするだけ。
が、ママが帰ってきて、横でうるさいので、「ママが楽しむためには、ちゃんと書類を出さなあかんの。松岡さんが難しい手続きをしてくれるから、ちょっと待っといて」とお口チャックを命じる。
でも、こんなことで黙っていないママ、
「あれっ、父さんはどこやの」に、もう死んでるからで、位牌を見せる。
「正彦はどこやの」に、ほらほら疲れた中年男になってるわと写真を見せる。
「すみませ〜ん。私、認知症がひどくなってきたんでしょうか。もう、キチガイ病院に入った方がいいんでしょうか。この子も、こんな親がおると分かったら結婚できないでしょ。どこか入れてくれてかまいませんからぁ…」
「酒井さんは、全然大丈夫ですよ。今のままの酒井さんでいてください。それに施設に入っても寂しいですよ。今みたいに自由に暮らしていると、大丈夫ですから…」
「そうですかぁ。私、頭がテンテンオブラートでしょ。この病気は治らないんでしょ。どんどんひどくなるんでしょ」
「まだまだ大丈夫ですよ。あっこさんのこと、ちゃんと分かってはるじゃないですか」
「この子のことが分からんようになったら、施設ですかぁ」
「別に分からなくなっても、そよ風さん行って、お風呂入って、ジェフと遊んで、ご飯食べて、ぐっすり寝て、楽しいことだけしといたらいいやん。今と変わらんやん」
「そうかなぁ。そんなんでいいんかなぁ」
「ママは考えなくていいの。松岡さんが難しいことは全部考えてくれるの」
「そうかなぁ。私、どうしたらいいんかなぁ」
「だから〜、それをもう考えなくてもいいって…。ママが考えてもロクなことないから…」。
で、二人から大丈夫、大丈夫と言われて、俄然、自信が出てきたママリン、
「そうですかぁ。私も本当はここにいたら安心なんです。父さんといるより、こっちの方がいいので、ほってるんです。娘と息子は向こうの家に住んでるですが、元気にしてるかぁって、寄ってくれるんです。あこちゃんがちゃんとしてくれてるんで大丈夫やよぉって言ってるんです。この子はなんでもやらしてくれるんで、やっぱり親子なんで気が楽なんです」と、珍しく私を褒める。
でも、どうも、あこちゃんとあこ姉ちゃんとうちのあっこの3人の章子ちゃんが、頭の中にいるようで、それはチビあっこ、若いあっこ、おばはんあっこの3人のようでもありややこしい。
このややこしさをまとめるには、録音してテープおこしして分析しなければならない。
今、思い出そうとしても、あっちこっちと飛び跳ねるママの脈略のない話は、筋や流れを手がかりに記憶する健常人にはムリである。
「でも酒井さんは、明るくて朗らかなのが素晴らしいです。ほんと、今のままの酒井さんでいてくださいね」
「そうなんです。私、明るいから、また役員をさせられて…。頭がテンテンオブラートなんで、ご迷惑かけると思いますので、やめさせて下さいって言ってるんですが、かまへん、かまへんって、そのままでいいからって…。私が外に出ようとしたら、ここにいなさい、テレビでも見ときぃて、部屋に呼んでくれるんです。私、看護婦してましたでしょ。患者さんからも、酒井さん、酒井さんって呼ばれて、ここはこうした方がいいなぁ、って教えてあげたら、そうか、酒井さん、すごいって、人気もんだったんです」。
自分でそこまで言うかの自画自賛。過去と今とがクロスオーバーした、自由奔放な自慢がはじまり、また松岡さん、席を立つきっかけがなくなる。
「でも、私は酒井さんに会うと元気がもらえます。今日もありがとうございます」と松岡さん。
小さい声で、「私は酒井さんとお話するのはたまにですから楽しいですけど、これが毎日なら、大変ですね」と私にこっそり。
そう、毎日このテンションはちょっとキツイですぅ。

で、今日の晩ご飯、スパゲッティとそうめんのどっちがいいと聞くと、間髪入れず、「スパゲッティがいい」。
「スパゲッティかぁ」とトーンの下がった私の返事に、「別にそうめんでもいいよ。あんたが食べたい方にしていいよ。手間がかからん方にしなさい」
「う〜ん、そうめんもスパゲッティも手間は変わらんねんけどぉねぇ。う〜ん。どっちにしようかなぁ」
「悩むんやったら、そうめんにしなさい」
「うん。そうめんにする」。
で、卵焼き、焼きナス、茹でブタ、紫タマネギ、セロリ、レタスを乗せたぶっかけそうめん。
具がいっぱい乗ったそうめんは。ママの想像を越えていたようで、「おいしいわぁ。おいしいわぁ」とズルズルいく。
たかがそうめんと侮っていたが、これが結構、食べるのに時間がかかる上、満腹感もすごくある。
夏の人気メニューにしよう。
7時に寝間着に着替えたママだが、「まだちょっと早いかな」と座卓に。
「あんなぁ、うちの母さんも父さんも、私がここにおるのを分かっているのに、電話1本もかけてこないんよ。しょせん継母やしぃ、可愛いのはつぎおちゃんだけやねん。ゆきさんは、ほんまひどい人や」
「ゆきさん、死んでるから」
「えっ、死んでるの。私、葬式行った? 忘れてるわ。病気、ひどくなってるんやわ」
「別に昔のことは忘れてもいいやん。明日はそよ風さんと覚えとき」
「えっ、明日、そよ風さんやの。行っていいの」
「行ってきぃ。行ってきぃ。迎えに来てくれるわ」
「私みたいなよそもんでも呼んでくれるの。大阪はやっぱりいいなぁ。ほんなら寝るわ」。
で、7時半に寝はる。
が、10時頃起きてきて、
「あんた、うっとこの子供たちは?」
「子供はみんな親の家」
「親の家って…、帰ったん。あんた、いいかげんなこと言わんといてなっ。信用できんわ。あんたはあっこと違います。他人や。はぁ〜、どうしたらいいんやろぉ」と、「あっこぉ〜、あこちゃ〜ん」と家中を探し回るが、「私があっこです」と言うと、「違う。私が探してるのはあこ姉ちゃんや」。
もう勝手にしてもらって、勝手に布団に入ったので、そのままにしておく。
でも、今日はお出かけなしである。松岡さんの訪問と雨のおかげである。
本日の評価:





「ちゃんと、歯を磨きな。最近、ママリン、お口臭いよ」
「はい」
「これと、これに着替えてな」
「はい」
「今日はベランダで、ご飯食べて。後で、ジェフのブラッシングしてな」
「わぁ〜。ベランダで食べるのぉ。うれしいなっ」
って、子供かぁ。いや、子供である。頑固で意地っ張りで、ややこしい子供である。って、これは子供の頃の私かぁ。

で、9時20分にお迎え。
「わぁ、酒井さん、今日はおしやれですねぇ」とスタッフの畑中さんが褒めてくれるので、
「みなさんも、おしゃれじゃないですかぁ」と、私が他のおばあちゃん褒めると、
「いえいえ、私なんか、そのへんのものを着てるだけで…」「いえいえ、おしゃれなんてねぇ…」「いえいえ、そんなことないですよぉ」と、3人のおばあちゃんが同時にうれしそうに「いえいえ」と返して来る。
ほんと、乙女みたいで、可愛い。
レースの上着を羽織ったり、フワフワのオーガンジーのブラウスを着てたり、ほんとにみんさん、おしゃれさんだ。ママももう少し、おしゃれさんにしてあげよう。

こういうものは専門用語が多くてさっぱりわからんので、私はサインするだけ。
が、ママが帰ってきて、横でうるさいので、「ママが楽しむためには、ちゃんと書類を出さなあかんの。松岡さんが難しい手続きをしてくれるから、ちょっと待っといて」とお口チャックを命じる。
でも、こんなことで黙っていないママ、
「あれっ、父さんはどこやの」に、もう死んでるからで、位牌を見せる。
「正彦はどこやの」に、ほらほら疲れた中年男になってるわと写真を見せる。
「すみませ〜ん。私、認知症がひどくなってきたんでしょうか。もう、キチガイ病院に入った方がいいんでしょうか。この子も、こんな親がおると分かったら結婚できないでしょ。どこか入れてくれてかまいませんからぁ…」
「酒井さんは、全然大丈夫ですよ。今のままの酒井さんでいてください。それに施設に入っても寂しいですよ。今みたいに自由に暮らしていると、大丈夫ですから…」
「そうですかぁ。私、頭がテンテンオブラートでしょ。この病気は治らないんでしょ。どんどんひどくなるんでしょ」
「まだまだ大丈夫ですよ。あっこさんのこと、ちゃんと分かってはるじゃないですか」
「この子のことが分からんようになったら、施設ですかぁ」
「別に分からなくなっても、そよ風さん行って、お風呂入って、ジェフと遊んで、ご飯食べて、ぐっすり寝て、楽しいことだけしといたらいいやん。今と変わらんやん」
「そうかなぁ。そんなんでいいんかなぁ」
「ママは考えなくていいの。松岡さんが難しいことは全部考えてくれるの」
「そうかなぁ。私、どうしたらいいんかなぁ」
「だから〜、それをもう考えなくてもいいって…。ママが考えてもロクなことないから…」。
で、二人から大丈夫、大丈夫と言われて、俄然、自信が出てきたママリン、
「そうですかぁ。私も本当はここにいたら安心なんです。父さんといるより、こっちの方がいいので、ほってるんです。娘と息子は向こうの家に住んでるですが、元気にしてるかぁって、寄ってくれるんです。あこちゃんがちゃんとしてくれてるんで大丈夫やよぉって言ってるんです。この子はなんでもやらしてくれるんで、やっぱり親子なんで気が楽なんです」と、珍しく私を褒める。
でも、どうも、あこちゃんとあこ姉ちゃんとうちのあっこの3人の章子ちゃんが、頭の中にいるようで、それはチビあっこ、若いあっこ、おばはんあっこの3人のようでもありややこしい。
このややこしさをまとめるには、録音してテープおこしして分析しなければならない。
今、思い出そうとしても、あっちこっちと飛び跳ねるママの脈略のない話は、筋や流れを手がかりに記憶する健常人にはムリである。
「でも酒井さんは、明るくて朗らかなのが素晴らしいです。ほんと、今のままの酒井さんでいてくださいね」
「そうなんです。私、明るいから、また役員をさせられて…。頭がテンテンオブラートなんで、ご迷惑かけると思いますので、やめさせて下さいって言ってるんですが、かまへん、かまへんって、そのままでいいからって…。私が外に出ようとしたら、ここにいなさい、テレビでも見ときぃて、部屋に呼んでくれるんです。私、看護婦してましたでしょ。患者さんからも、酒井さん、酒井さんって呼ばれて、ここはこうした方がいいなぁ、って教えてあげたら、そうか、酒井さん、すごいって、人気もんだったんです」。
自分でそこまで言うかの自画自賛。過去と今とがクロスオーバーした、自由奔放な自慢がはじまり、また松岡さん、席を立つきっかけがなくなる。
「でも、私は酒井さんに会うと元気がもらえます。今日もありがとうございます」と松岡さん。
小さい声で、「私は酒井さんとお話するのはたまにですから楽しいですけど、これが毎日なら、大変ですね」と私にこっそり。
そう、毎日このテンションはちょっとキツイですぅ。


「スパゲッティかぁ」とトーンの下がった私の返事に、「別にそうめんでもいいよ。あんたが食べたい方にしていいよ。手間がかからん方にしなさい」
「う〜ん、そうめんもスパゲッティも手間は変わらんねんけどぉねぇ。う〜ん。どっちにしようかなぁ」
「悩むんやったら、そうめんにしなさい」
「うん。そうめんにする」。
で、卵焼き、焼きナス、茹でブタ、紫タマネギ、セロリ、レタスを乗せたぶっかけそうめん。
具がいっぱい乗ったそうめんは。ママの想像を越えていたようで、「おいしいわぁ。おいしいわぁ」とズルズルいく。
たかがそうめんと侮っていたが、これが結構、食べるのに時間がかかる上、満腹感もすごくある。
夏の人気メニューにしよう。
7時に寝間着に着替えたママだが、「まだちょっと早いかな」と座卓に。
「あんなぁ、うちの母さんも父さんも、私がここにおるのを分かっているのに、電話1本もかけてこないんよ。しょせん継母やしぃ、可愛いのはつぎおちゃんだけやねん。ゆきさんは、ほんまひどい人や」
「ゆきさん、死んでるから」
「えっ、死んでるの。私、葬式行った? 忘れてるわ。病気、ひどくなってるんやわ」
「別に昔のことは忘れてもいいやん。明日はそよ風さんと覚えとき」
「えっ、明日、そよ風さんやの。行っていいの」
「行ってきぃ。行ってきぃ。迎えに来てくれるわ」
「私みたいなよそもんでも呼んでくれるの。大阪はやっぱりいいなぁ。ほんなら寝るわ」。
で、7時半に寝はる。
が、10時頃起きてきて、
「あんた、うっとこの子供たちは?」
「子供はみんな親の家」
「親の家って…、帰ったん。あんた、いいかげんなこと言わんといてなっ。信用できんわ。あんたはあっこと違います。他人や。はぁ〜、どうしたらいいんやろぉ」と、「あっこぉ〜、あこちゃ〜ん」と家中を探し回るが、「私があっこです」と言うと、「違う。私が探してるのはあこ姉ちゃんや」。
もう勝手にしてもらって、勝手に布団に入ったので、そのままにしておく。
でも、今日はお出かけなしである。松岡さんの訪問と雨のおかげである。
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by asayosan
| 2011-07-04 11:43
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