ボケリン・ママリンの観察日記

1月23日(月)表情豊かに見ぶり手振りの女優アサヨであった。

最近ジェフの奴が、ママに隠れて私に急接近してきた。
私の布団の枕元で「入れてニャ〜」鳴くが、「ばあちゃんとこに行きぃ」と断ると、「フンっ」と怒って立ち去り、横のばあちゃんの顔を舐めて起こして、「あ〜、ジェフかぁ。さっ、お布団に入りぃぃ」と入れてもらっている。
ジェフにとってママは、もう二番手になったようだ。

こないだも、ジェフの夜ばいを断ったら、顔に水をかけられた。
枕元に水を入れたグラスを置いてるのだが、ジェフの奴、前足を水で濡らして、私の顔にふりかけたようだ。
ジェフがグラスから水を飲むから置いてあげている水を浴びせるなんて、恩を仇で返すあたりは、ばあちゃん似である。
絶対にジェフはナンバー1にはなれないのだから、その立場を理解してほしいものだ。

で、ママは朝は順調で、さっさと管理人室に遊びに行くが、「これ、もろてん」とはっさくとカリンをもらって戻って来る。
まるで、ちっちゃい子供のお使いのようで、可愛い。
理事長が和歌山のおばちゃんの山から取ってきたそうで、後でたくさんもらう。

今日は6時からケアマネージャの松岡さんが訪問の連絡があるが、「遅いなら日を改めますが…」に、「もう6時には、ママは夕飯を食べ終わっているんで大丈夫です」。

e0200261_12231253.jpge0200261_12233389.jpgで、5時過ぎにママが帰って来た。
「なぁ〜、明日はもう行くのやめとくわ。ここまで迎えに来てもらうの気の毒やから、私の家の近所のとこに頼むわ」だそうだ。

パジャマに着替えてもらってる間に、モヤシを一袋入れたほぼ野菜炒めのような焼きそばを作る。
フライパンをふっている横で、ゴチャゴチャとしゃべりだすので、「料理作ってる時はじゃませんといてぇ。コタツで待っててっ」と注意すると、ご機嫌急降下。

「私は、ここにはおられへんわっ。ご飯食べたら帰るわっ。ジェフ、おまえも一緒に帰ろうなぁ。はいはい、ちゃんと噛んでます。私はあんたにポンポン言われるのがイヤやねん。えっ、ちゃんと説明してるって、もっと優しく言えんかなぁ。そうやそうや、あんたは男みたいなもんやしな。まっ、帰りますから…。自分の家で気楽に暮らすのが一番やわ。すみませんが、今日、一晩、泊めてください。明日は、帰りますので…」
「はいはい。帰ってください。ご飯食べて、ふかふかのお布団で寝て、洗濯も掃除もしてもらって、そよ風さんに行って楽しいんやろなぁ思っていたけど、よけいなお世話やったんやね。はいはい、もうなにもしません」
「私は、あんたのその態度がイヤやねん」
「はいはい、そんなにこの家が嫌いやったら、出て行ってよろしい。好きなとこに出て行き。な〜んや、美味しい美味しい言って食べてるから、喜んでるんかと思っていたら、イヤイヤやったんやなぁ。よ〜く、分かった。もういいです」
「そんなぁ、私はここが嫌いやなんて言うてないやん。あんたに迷惑をかけるのが悪いから出て行くって言ってるんやないの」
「違う。そんな言い方してなかった。嫌いやったら、嫌いってハッキリ言うたらよかったのにぃ。それが分かったら、さっさと出て行く準備を手伝ってあげるわ。はい、オサラバやね」
「違うんよ。嫌いやないけど、あんたに迷惑がかかるからなぁ〜、それが心配やの」
「違う、そんな気持ちと違うっ。ごまかしたらあかんよ。そうやなかったら、焼きそばを作った人の目の前で、帰る、帰るなんか言えるはずないっ。帰るやなくて、いただきます、ありがとう、ごちそうさま、でしょう。ママは一言も言ってないよ」
「言うたよ。ちゃんと言いました。あんたが聞き損ねたんやわ。美味しかったよぉ。ありがとう」
「もう、遅いわ。明日は自由に出て行ってください」
「だから〜、グスン、なんでぇ〜、グスン、分かってくれへんのぉ。ここが嫌いやないのよぉ。おりたいのぉ。でも、あんたの迷惑になるからと思ってぇ、出て行こうと思ってるんやないのぉ」
「それはどうも、ありがとう。ママの自由にしてください」
「あ〜、わかった。出て行きますから…。明日でいいですかぁ。洗いもん…、はい、洗いもんしますぅ」。

ママは「迷惑ではないから、ずっとおっていいよ」という言葉を待っていたようだが、あんなけ文句を言われた後なので、今日はちょっと灸を据えてみる。
案の定、私のご機嫌とりにオロオロするが、度が過ぎると逆ギレするので、「もういい。わかったから、全部ちゃんとしてあげる」と意味深な言葉で締める。

e0200261_15353461.jpgで、6時に松岡さんが来てくれて、ママは地獄に仏とばかりに、自分の不幸な境遇を訴えはじめる。

「どこか働きに行くとこはないでしようか。ここにおりたくはないんですぅ。どこか住み込みで働けるとこはないでしょうか」
「そよ風さんが合ってると思いますけどねぇ。世間の仕事はキツいですから、そよ風さんのお手伝いをしてたらどうですかぁ」
「そうなんです。そよ風さんではいろんな人の手助けしてるんです。ここの世話にならんと、あそこの女中になったらよかったわ」
「住み込みはムリですけど、そよ風さんで、人肌脱いでくださいよ」。

この褒め言葉に火がついて、ママの快進撃がはじまる。
「私はこの子の性格は一番よぅ分かっているんです。この子の本音も分かってるんです。この子は一人がいいんです。しゃべるのが嫌いでしょ。私は、もぅずっとずっとずっとしゃべっていたいんですぅ。ケンカしてでもしゃべりたいんですぅ。でも、すぐにこの子にうるさいって言われるんですぅ。この子は、根はいい人なんですけど、口が悪いんです」
「どこの親子も、丁寧な話し方なんかしてませんよぉ。親子だからですよぉ」
「そうですかぁ。この子は本当は優しいのに、ポンポンと口が悪いからソンしてるんですぅ」
「そうやってお母さんが大人になってあげたらいいじゃないですかぁ」
「そうですね。この子は、御しがたし、ですから…。え、意味ですか。意のままにならないことです。えっ、料理ですかぁ。料理はこの子の作るもんは満点です」。

そうかぁ。デーサービスで介護士さんらプロによる心地よい対応に甘やかされているから、私の普通の接し方が、“御しがたし”となるのだろうか…。

で、次は自分がいかに人によく尽くし、子供の世話が出来て、看護婦の免許もあるプロなのかを自画自賛のマシンガントークで、詩吟で鍛えたよく通る声で、身振り手振り、声色芸に女優力まで発揮しての一人芝居のアサヨ劇場。
もう誰も止めることができない。

「私は親をなくした子供たちの世話をしてたんですぅ。そういう子は、自分の境遇を分かっていますから、おばちゃん、おばちゃん、って慕ってくれるんですぅ。カルタしよかぁ、とか、お歌唄おうかぁとか、都会ずれした子供はダメです。母親をなくした4人の子供がいて、食べてない時もありますけど、みんなで我慢して、これは明日食べようなぁとか、しんどい時もユーモア的に言うんです。そしたら、みんなが、そうしよ、そうしよって…。困ってる人も助けてあげようねぇって。あのねぇ。親のない子は、自分で自分の顔をたたくんです。そうしないと、お母さんに叩かれるから、先に自分で叩いとくんです」

「酒井さんは、いろんなことを体験されてるんですねぇ。それをそよ風さんで役立ててくださいよ」

「はい。私はいろんな経験が、みんな身になってますから…。私は、泥棒とヘンな関係の女の人だけはしたことないですぅ。でも、いろんな経験をしましたから…。この道で本領発揮です。はい。今はとっても充実してます」。

松岡さんに褒められると、謙遜の毛の字もなく、そのまま賛辞を受けて得意満面もママ。
褒められるの、おだてられるの、自分のことをしゃべること、自分の話題で始終するのが大好きな、この主役体質は、いったいどこから沸いてきたのだろう。
「酒井さんは、強い。強いです」と、松岡さんは感心する。

で、6時から7時11分まで、しゃべりっぱなしのママリン、それでもまだまだしゃべり足らないようで、帰り仕度の松岡さんに関係なく、どんどん話をかぶせていく。
認知症というよりも、この異常なしゃべり癖は、なんか脳内の別の病気ではないかと思ってしまう。

7時半には寝てくれたのはいいが、またへんな寝言。
「ジェフ、ジェフも帰ろうなぁ。母さんはどんな子供でも育てるのが名人やから、おまえも大丈夫やでぇ」。
って、ジェフは大人の猫やん。

このまま爆睡に入ったようだが、夜中に起き出して、玄関から出て行ったようだ。
時計を見ると1時10分。エレベータは5階で止まっている。
エレベータで下がっていくと、3階にママの姿が…。
1階から3階にあがると行方不明で、1階に戻ると、マンションを出ようとするママ発見。

連れて帰って、布団に入れる。
自分の家がどこかわからなくなったようで、玄関の外にも部屋があるような勘違いをしたようだ。
こういう家出は、ただ寝ぼけてるだけなので、罪がない。

本日の評価:001.gif045.gif044.gif003.gif018.gif003.gif003.gif003.gif014.gif
本日の家出:1回(寝ぼけ)
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by asayosan | 2012-01-24 13:17 | 今日のママリン

認知症のママリンの日々の暮らし
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